@Toyofumi Fujiwara:00283
283 後天性赤芽球癆
○ 概要
1.概要
赤芽球癆は正球性正色素性貧血と網赤血球の著減及び骨髄赤芽球の著減を特徴とする症候群であり、病因は多様である。赤芽球癆の病型分類として大きく、先天性と後天性に分けられ、後天性は臨床経過から急性と慢性に区分される。
2.原因
後天性慢性赤芽球癆は病因を特定できない特発性と、基礎疾患を有する続発性に分類される。続発性には胸腺腫、大顆粒リンパ球性白血病や悪性リンパ腫などのリンパ系腫瘍、自己免疫疾患、薬剤性、固形腫瘍、ウイルス感染症、ABO不適合同種造血幹細胞移植などがある。
3.症状
成人の場合、赤芽球癆と診断された時点で既に重症の貧血であることが多い。自覚症状は貧血に伴う全身倦怠感、動悸、めまいなどである。
4.治療法
末梢血液学的検査及び骨髄検査により赤芽球癆と診断されたら、被疑薬は中止ないし他の薬剤に変更する。貧血が高度で日常生活に支障を来たしているときには赤血球輸血を考慮する。赤芽球癆と診断してから約1か月間の経過観察を行い、その期間に病因診断を行う。赤芽球癆と診断してから1か月が経過しても貧血が自然軽快せず、かつ基礎疾患の治療を行っても貧血が改善しない場合には、免疫抑制薬の使用を考慮する。使用される免疫抑制薬は副腎皮質ステロイド、シクロスポリン、シクロホスファミドなどである。免疫抑制療法の目標は赤血球輸血依存の回避である。
5.予後
特発性造血障害調査研究班による疫学調査によれば、特発性赤芽球癆の予測10年生存率は95%、胸腺腫関連赤芽球癆の予測生存期間中央値は約12年、大顆粒リンパ球白血病に伴う赤芽球癆の予測10年生存率は86%である。主な死因は感染症と臓器不全である。
○ 要件の判定に必要な事項
患者数
年間新規患者発生率:0.3人/100万人
発病の機構
不明(発症メカニズムとして、遺伝子異常、ウイルス、自己傷害性リンパ球あるいは特異的抗体による自己免疫機序などが推定されている。)
効果的な治療方法
未確立(根治可能な治療法は確立されていない。)
長期の療養
必要(治療奏効例においては寛解維持療法の継続が、治療不応例においては赤血球輸血が必要)
診断基準
あり(研究班作成の診断基準あり。)
重症度分類
自己免疫性溶血性貧血の重症度分類を用いてStage3以上を対象とする。ただし、薬物療法を行っていてヘモグロビン濃度10g/dL以上の者は対象外とする。
○ 情報提供元
日本血液学会
<診断基準>
特発性後天性赤芽球癆の診断基準
1)臨床所見として、貧血とその症状を認める。易感染性や出血傾向を認めない。先天発症としてダイアモンド・ブラックファン(Diamond-Blackfan)貧血があり、しばしば家族内発症と先天奇形を認める。後天性病型は全ての年齢に発症する。
2)以下の検査所見を全て認める。
(1)血中ヘモグロビン濃度が10.0g/dL未満の貧血
(2)網赤血球が1%未満
(3)骨髄赤芽球が5%未満
3)基礎疾患による場合を除き、以下の検査所見は原則として正常である。
(1)白血球数
(2)血小板数
4)1)~3)によって赤芽球癆と診断し、病歴と身体所見・検査所見によって先天性赤芽球癆及び続発性赤芽球癆を除外する。
(1)先天性赤芽球癆(ダイアモンド・ブラックファン貧血など)を除外できる。
(少なくとも乳幼児期には貧血の所見を認めない。)
(2)薬剤性を除外できる(エリスロポエチン製剤、フェニトイン、アザチオプリン、イソニアジドなど)。
(3)ウイルス感染症(ヒトパルボウイルスB19、HIVなど)を除外できる。
(4)胸腺腫を除外できる。
(5)骨髄異形成症候群・造血器腫瘍を除外できる。
(6)リンパ系腫瘍(慢性リンパ性白血病、悪性リンパ腫など)を除外できる。
(7)他の悪性腫瘍を除外できる。
(8)膠原病・リウマチ性疾患を除外できる。
(9)妊娠を除外できる。
<重症度分類>
Stage3以上を対象とする。ただし、薬物療法を行っていてヘモグロビン濃度10g/dL以上の者は対象外とする。
<table>
stage 1 軽 症 薬物療法を行わないでヘモグロビン濃度10 g/dL 以上
stage 2 中等症 薬物療法を行わないでヘモグロビン濃度7~10 g/dL
stage 3 やや重症 薬物療法を行っていてヘモグロビン濃度7g/dL 以上
stage 4 重 症 薬物療法を行っていてヘモグロビン濃度7g/dL 未満
stage 5 最重症 薬物療法及び脾摘を行ってヘモグロビン濃度7g/dL未満
stage 5 最重症 「薬物療法を行っていてヘモグロビン濃度7g/dL未満かつ鉄過剰による臓器障害あり」
</table>
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
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