メタ分析は、生態学や生物多様性保全における定量的エビデンスの統合において重要な役割を果たしている。メタ分析における推定値の信頼性は、偏りのない一次研究の収集に大きく依存する。生態学におけるメタ分析で生じる様々なバイアスの可能性はこれまでの研究でも検討されてきたが、異なる言語で発表される統計結果や研究の特性にバイアスが存在するかどうかは、環境科学の分野では検証されたことがなかった。そこで本研究では、既存のメタ分析を系統的に検索し、そこで利用されている英語で発表された研究と日本語で発表された研究の間で効果サイズの推定値を比較した。日本の研究機関に所属する研究者が執筆した40の生態学におけるメタ分析論文のうち、3つのメタ分析論文のみが一次研究を2言語で検索し、その結果十分な数の英語研究と日本語研究を解析の対象としていた。そこで本研究では、この3つのメタ分析論文に含まれた4つのメタ分析を対象として用いた。4つのうち2つのメタ分析では、利用された英語研究と日本語研究で効果サイズが大きく異なり、日本語研究を除外した場合には、全体の平均効果サイズやその方向性までもが大きく変化することが明らかになった。このような効果サイズの違いは、英語研究と日本語研究で報告された統計結果や研究の特性(特に分類や生態系)が系統的に異なることに起因している可能性が高い。本研究では多くのメタ分析を対象にすることはできなかったものの、ここで得られた知見は、異なる言語で発表された研究間でその特性や効果サイズの推定値に系統的な違いがあるため、英語以外の研究を除外すると生態学におけるメタ分析の結果にバイアスが生じる可能性があることを示唆している。最後に、このようなメタ分析における言語バイアスのリスクを軽減するために有効であると考えられる対策についても提案を行う。.
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