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@Toyofumi Fujiwara:00302 JSONTXT

302 レーベル遺伝性視神経症 ○ 概要 1.概要  ミトコンドリア遺伝子変異が母系遺伝形式を規定し、他の遺伝因子、エピジェネテイック修飾、環境因子が発症を制御する視神経変性疾患である。若年男性に好発するが、母系遺伝のため、罹患男性の子孫には患者は現れず、無兆候女性保因者の子孫に患者が現れる。一眼の視力低下、中心暗点で始まり、不定期間をおいて反対眼も同様の症状を示す。網膜神経節細胞が変性脱落し、数か月のうちに、両眼の高度視神経萎縮にいたる(矯正視力0.1以下)。 2.原因  ミトコンドリア遺伝子変異(3460, 11778, 14484塩基対変異が90%)が母系遺伝を規定している。しかし、男性好発性、視神経限局性、遅発性発症等の原因は不明である。 3.症状  両眼性である。進行は亜急性(数週から数か月)である。 (1)視力低下 (2)中心暗点 光視症、羞明を自覚することがある。 4.治療法  現時点では治療法が確立されていない。 コエンザイムQ誘導体のイデベノンやEPI-743が一定の患者に有効であったという報告がある。その他、シクロスポリンなどの免疫抑制、遺伝子治療、幹細胞治療、胚細胞治療などについて研究が推進されている。 5.予後  ほとんど全ての症例で両眼性であり、10歳代~30歳代と45~50歳代の二峰性の発症ピークをもって、視力は0.1以下となる。医学的失明(光覚なし)にいたる割合は高くない。青年期・壮年期に中途社会的失明に至り、読書・書字・運転・色識別・顔認識障害等のため、日常生活や就学・就労に多大な支障を来たす。 ○ 要件の判定に必要な事項 1.患者数   一年間の新規発症推定患者数117人 2.発病の機構   不明(遺伝子) 3.効果的な治療方法 未確立(根治的治療なし。) 4.長期の療養   必要(ほとんどが恒久的中心視機能障害。) 5.診断基準 あり(網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究班と日本神経眼科学会合同設置基準あり。)  6.重症度分類 良好な方の眼の矯正視力が0.3未満を対象とする。 ○ 情報提供元 視覚系疾患調査研究班(網膜脈絡膜・視神経萎縮症)「網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究班」 研究代表者 岡山大学医学部眼科 教授 白神史雄  日本神経眼科学会 <診断基準・重症度分類> Definite、Probable、Possibleを対象とする。 レーベル遺伝性視神経症診断基準 症状 急性~亜急性、両眼性、無痛性の視力低下と中心暗点を認める。両眼同時発症の場合もあるが、通常は片眼に発症し、数週から数か月を経て、対側眼も発症する。 急性期に視神経乳頭の発赤・腫脹、視神経乳頭近傍毛細血管拡張蛇行、網膜神経線維腫大、視神経乳頭近傍出血などの検眼鏡的異常所見のうち1つ以上を認める。 慢性期に乳頭黄斑線維束を中心とした、様々な程度の視神経萎縮を呈する。 検査所見 特定の塩基対におけるミトコンドリア遺伝子ミスセンス変異を認める。塩基対番号3460, 11778, 14484の塩基置換が大半を占め、中でも我が国では11778番のグアニンからアデニンへの置換を示すものが同定された患者の90%の例に見られる。これら三大変異は委託検査が可能であるが、その他の変異については遺伝子解析を行っている専門施設に検査を依頼する必要がある。 急性期には眼窩部CT/MRIで球後視神経に異常を認めない。 急性期のフルオレセイン蛍光眼底造影検査で、拡張蛇行した視神経乳頭近傍毛細血管からの蛍光色素漏出がない。視神経乳頭腫脹を呈する他の疾患では同検査で蛍光色素漏出を示すため、極めて特異度の高い検査所見である。 鑑別診断 以下の疾患を鑑別する。 特発性視神経炎、脱髄性視神経症(多発性硬化症を含む)、視神経脊髄炎(抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎を含む)、虚血性視神経症、圧迫性視神経症、中毒性・栄養障害性視神経症、外傷性視神経症、 他の遺伝性視神経症、黄斑ジストロフィー <診断のカテゴリー> Definite LHON(確定例):(1)症状の①と②もしくは①と③を満たし、かつ、(2)検査所見の①~③の全てを満たす。 Probable LHON(確実例):(1)症状の①もしくは③を満たし、かつ、(2)検査所見の①と②を満たす。 Possible LHON(疑い例):(1)症状の①もしくは③と、(2)検査所見の②③を満たし、詳細な家族歴で母系遺伝が明らかであるが、ミトコンドリア遺伝子変異を検出できないもの。 LHON carrier(保因者):Definite、Probable、又はPossibleの患者を母系血縁として有し、(2)検査所見の①に該当する視機能無徴候者。または、視神経炎や圧迫性視神経症など視機能障害を呈する他疾患で発症する患者のうち(2)検査所見の①を満たすもの。この場合、(2)検査所見の②に反してもよい。 <重症度分類> 良好な方の眼の矯正視力が0.3未満を対象とする。 ※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項 1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。 2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。 3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。

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