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@Toyofumi Fujiwara:00292 JSONTXT

292 総排泄腔外反症 ○ 概要 1.概要  総排泄腔外反症は、稀少難治性の先天性下腹壁形成異常で、臍帯ヘルニアの下方中心に外反した回盲部が存在し、その両側に二分した膀胱が外反して存在する。鎖肛を合併し大腸は低形成で短く、内・外性器異常、恥骨離開を有し、多くは腎奇形、仙骨奇形、下肢奇形、染色体異常、脊髄髄膜瘤なども合併する。生後から何回もの外科治療と長期入院が必要であるが、適切な治療方針には不明な部分が多い。女性の場合、内性器は双角に分離し子宮腟形成が必要で、男児では、陰核形成不全のため女児として育てられている例もある。成長しても、外陰形成、腟形成、膀胱拡大術、腎不全による腎移植の必要な例も多く、一生涯にわたるケアが必要である。  発生頻度は、出生15~20万人に1人とされ、性別では、若干女児に多い。平成26年の全国調査では、229例が集計され、最近30年間の発生頻度は約20万の出生に1人であった。 2.原因  胎生4週に4つの皺襞が合わさって体壁が形成されるが、この時期に腹部から骨盤にかけての下腹壁が形成されないために発生すると考えられ、腹壁が形成されないため回盲部の管腔形成が障害され、腸管と膀胱が外反した状態になると考えられている。発生には、多因子が関与すると考えられ、ヒトにおける遺伝子異常は明らかにされていない。疫学調査では、体外受精、喫煙、向精神薬服薬などが報告されているが、明確な因果関係は不明である。 3.症状  臍帯ヘルニアを合併し、その下方に外反した膀胱と回盲部が存在する。鎖肛を合併し、外陰は形成不全のため肉眼的に男女の区別が困難である。男児の場合は性腺を鼠径部に触知することが多い。恥骨離開を伴っているため、下肢がやや外反した位置に存在する。外反している膀胱は機能が低下し、9割は排尿のためにカテーテル管理が必要となる。排便機能に関しては、大腸人工肛門管理となるが、大腸が短く仙骨神経機能不全を合併している約半数の症例では、肛門形成が不可能で永久人工肛門となる。肛門形成がなされた場合でも、排便は浣腸管理となる。髄膜瘤のため、歩行障害も出現する。腎奇形や膀胱尿管逆流により腎不全も長期的合併症として重要である。染色体男性で外陰形成不全のために女性として育児された場合、精巣からの男性ホルモンで脳に男性として刷り込みがなされるため、精神的な葛藤の原因となる。男児として育てられた2/3は、男性としての性決定に満足している。 4.治療法  新生児期は、外反回盲部閉鎖、大腸人工肛門造設、外反膀胱閉鎖、恥骨閉鎖を行い、生後3か月から1歳半で、外陰形成、肛門形成、膀胱形成などの手術が施行されることが多い。外陰部に痕跡でも外陰を有する場合は、男性として外陰形成を行う。現在の医療では機能的な男性外陰を作成することは不可能なため、外陰形成が困難と考えられる場合は、女性としての外陰形成が選択される場合がある。性の決定は、将来の生殖器形成の必要性など両親を含めたチーム医療によるカウンセリングが前提となる。女児の場合、二次性徴初来前に、腟形成、月経血流出路形成を行う必要がある。 5.予後  1960年に最初の手術生存例が発生するまでは死亡率が100%であったが、1980年代には生存率が90%にまで到達した。平成26年の全国調査では、永久人工肛門例は7割、膀胱機能障害例は6割、清潔間欠自己導尿施行例は3割であった。月経異常は6割、月経血流出路障害は5割に認められ、生涯にわたる継続的治療や精神的カウンセリングが必要である。 ○ 要件の判定に必要な事項 患者数 約300人 発病の機構 不明(疫学的因果関係の報告はあるが、詳細は不明である。) 効果的な治療方法 未確立(対症療法が中心。) 長期の療養 必要(排便・排尿障害の他に、思春期における腟狭窄による流血路障害や妊娠・出産など生殖器障害に関しても生涯にわたる治療が必要である。腎不全に伴う透析治療や腎移植、さらに脊髄機能障害例では下肢運動障害への治療が必要である。) 診断基準 あり(日本小児外科学会承認の診断基準あり。) 重症度分類   以下のいずれかを満たす例を重症例として対象とする。 1)直近1年間で1回以上急性腹症により入院治療を要したことがある場合。 2)尿路感染症(UTI)を繰り返す場合(直近6か月で3回以上38℃以上の発熱を伴う尿路感染症を来す場合。) 3)腎:CKD重症度分類ヒートマップが赤の部分の場合。 4)性交困難な腟狭窄に対する腟形成が必要な場合。 ○ 情報提供元 平成26年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業)研究「先天性難治性稀少泌尿器疾患群(総排泄腔遺残、総排泄腔外反、MRKH症候群)におけるスムーズな成人期医療移行のための分類・診断・治療ガイドライン作成」 研究代表者 新潟大学大学院医歯学総合研究科 教授 窪田 正幸 <診断基準> 先天性下腹壁・外陰形成不全症で、生下時の特徴的身体所見で診断は確定する(Definite)。 臍帯ヘルニアの下方に接して膀胱が二つに外反分裂して存在し、その間に回盲部腸管が外反して介在する。大腸は短小で、外反した回盲部から回腸が翻転脱出している。外陰部は、低形成で二つに分裂し、外観からは男女の区別がつかない。恥骨は離開している。女性の場合、重複腟・子宮のように二分している。男性の場合、外性器は二分し低形成である。その他、泌尿器奇形、脊髄髄膜瘤の合併も多い。 <身体的所見シェーマ> <重症度分類> 以下のいずれかを満たす例を重症例として対象とする。 1)直近1年間で1回以上急性腹症により入院治療を要したことがある場合。 2)尿路感染症(UTI)を繰り返す場合(直近6か月で3回以上38℃以上の発熱を伴う尿路感染症を来す場合。) 3)腎:CKD重症度分類ヒートマップが赤の部分の場合。 4)性交困難な腟狭窄に対する腟形成が必要な場合。 CKD重症度分類ヒートマップ <table>     蛋白尿区分 蛋白尿区分 A1 A2 A3     尿蛋白定量 (g/日) 尿蛋白/Cr 比 (g/gCr) 尿蛋白定量 (g/日) 尿蛋白/Cr 比 (g/gCr) 正常 軽度蛋白尿 高度蛋白尿     尿蛋白定量 (g/日) 尿蛋白/Cr 比 (g/gCr) 尿蛋白定量 (g/日) 尿蛋白/Cr 比 (g/gCr) 正常 軽度蛋白尿 高度蛋白尿     尿蛋白定量 (g/日) 尿蛋白/Cr 比 (g/gCr) 尿蛋白定量 (g/日) 尿蛋白/Cr 比 (g/gCr) 正常 軽度蛋白尿 高度蛋白尿     尿蛋白定量 (g/日) 尿蛋白/Cr 比 (g/gCr) 尿蛋白定量 (g/日) 尿蛋白/Cr 比 (g/gCr) 正常 軽度蛋白尿 高度蛋白尿     尿蛋白定量 (g/日) 尿蛋白/Cr 比 (g/gCr) 尿蛋白定量 (g/日) 尿蛋白/Cr 比 (g/gCr) 正常 軽度蛋白尿 高度蛋白尿     尿蛋白定量 (g/日) 尿蛋白/Cr 比 (g/gCr) 尿蛋白定量 (g/日) 尿蛋白/Cr 比 (g/gCr) 0.15未満 0.15~0.49 0.50以上 GFR区分 (mL/分/1.73㎡) G1 正常又は高値 ≧90 緑 黄 オレンジ GFR区分 (mL/分/1.73㎡) G2 正常又は軽度低下 60~89 緑 黄 オレンジ GFR区分 (mL/分/1.73㎡) G3a 軽度~中等度低下 45~59 黄 オレンジ 赤 GFR区分 (mL/分/1.73㎡) G3b 中等度~高度低下 30~44 オレンジ 赤 赤 GFR区分 (mL/分/1.73㎡) G4 高度低下 15~29 赤 赤 赤 GFR区分 (mL/分/1.73㎡) Gr5 末期腎不全(ESKD) <15 赤 赤 赤 GFR区分 (mL/分/1.73㎡) Gr5 末期腎不全(ESKD) <15 赤 赤 赤 </table> ※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項 1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。 2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。 3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。

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