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3.ホスホリパーゼD2の活性化がサイクリックホスファチジン酸を産生する
3.ホスホリパーゼD2の活性化がサイクリックホスファチジン酸を産生する
 つぎに,サイクリックホスファチジン酸が細胞内で合成されるしくみを明らかにしたいと考えた.サイクリックホスファチジン酸がStreptomyces chromofuscus由来のホスホリパーゼDによりつくられることが報告されていたことを参考に,動物細胞においてもホスホリパーゼDにより合成されているのではないかと考え,ホスホリパーゼD1およびホスホリパーゼD2の2つのアイソフォームが発現しているMDA-MB-231細胞を利用して32Pによる細胞標識実験を行った.標識された細胞から脂質を抽出し2次元薄層クロマトグラフィーにより分離したところ,ホルボールエステルによりホスホリパーゼDを活性化させた場合のみ,サイクリックホスファチジン酸の標準物質と同じ場所に放射性標識されたスポットが観察された.さらに,このスポットはホスホリパーゼDの阻害剤である1-ブタノールにより消失したがt-ブタノールでは消失しなかったことから,ホスホリパーゼD依存的に合成されたスポットであることが明らかになった.そこでつぎに,2つのアイソフォームのうち,どちらがサイクリックホスファチジン酸の合成に寄与しているのかを明らかにするため,酵素活性を阻害したホスホリパーゼD1およびホスホリパーゼD2をドキシサイクリン誘導下でCHO細胞に過剰に発現させ,ホルボールエステルによりホスホリパーゼDを活性化させた.その結果,野生型と比較して,ホスホリパーゼD2を過剰に発現させたCHO細胞ではサイクリックホスファチジン酸が約10倍も増加したが,ホスホリパーゼD1を過剰に発現させたCHO細胞では野生型と同程度であった.さらに,野生型ホスホリパーゼD2および酵素活性を阻害したホスホリパーゼD2の組換え体を作製しリゾホスファチジルコリンを基質として反応させたところ,野生型ホスホリパーゼD2のみでサイクリックホスファチジン酸の産生が確認された.以上から,ホスホリパーゼD2がサイクリックホスファチジン酸の産生に寄与する酵素であることが明らかになった.
 つづいて,in vivoにおけるサイクリックホスファチジン酸のしくみをさらに明らかにするため,ヒトより採取した末梢血単球細胞に,インスリン,ホルボールエステルさらに,リポ多糖を利用して刺激をくわえ,産生するサイクリックホスファチジン酸の濃度を液体クロマトグラフィー-質量分析器により測定した.その結果,無刺激の状態ではきわめて低い濃度のままであったが,刺激によりサイクリックホスファチジン酸の濃度は急激に上昇した.たとえば,100 nMのホルボールエステルで刺激した場合,無刺激のときと比較して,オレイルサイクリックホスファチジン酸およびパルミトイルサイクリックホスファチジン酸とも,産生は1000倍以上に劇的に増加した.さらに,100 nMのインスリンにて生理的な刺激をあたえた場合,オレイルサイクリックホスファチジン酸は約300倍増加したにもかかわらず,パルミトイルサイクリックホスファチジン酸は変化しなかった.さらに,この現象はホスホリパーゼDの阻害剤により抑制された.以上から,サイクリックホスファチジン酸の細胞内における合成はホスホリパーゼD2に依存しており,かつ,きわめて一過的な反応であることがわかった(図2).

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