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2.サイクリックホスファチジン酸はPPARγのアンタゴニストである
2.サイクリックホスファチジン酸はPPARγのアンタゴニストである
 生体内には脂肪酸を1本しかもたないリン脂質が存在しており,これをリゾリン脂質とよぶ.通常は2本あるリン脂質の片方のアシル基が酵素反応により切断された脂肪酸で,多様な生理活性をもつことが報告されている1).そのなかでも,リゾホスファチジン酸はスフィンゴシン1-リン酸とならび,もっともよく研究されてきたリゾリン脂質である.ここで述べる研究の行われた米国Tennessee大学Tigyi研究室では,リゾリン脂質とPPARγとを介した循環器系疾患の研究を生化学的および分子生物学的な手法を取り入れて行っている.当時,Tigyi研究室を含め,ほかの研究グループにより,細胞表面の7回膜貫通型受容体の同定や解析は活発に行われていたが,一方で,細胞内受容体の存在は明らかにされていなかった.ところが,2003年に入り,リゾホスファチジン酸がPPARγの内在性アゴニストであることが報告されてから5),さまざまな脂質性リガンドの報告が増加した.Tigyiらは,酸化LDL低密度リポタンパク質に多様なリゾホスファチジン酸およびリゾホスファチジン酸アナログが存在することを明らかにし,これらがPPARγの活性化を介して動脈硬化症の前段階である新生内膜の形成に寄与することを報告した6).そののち,リゾホスファチジン酸のアルキル体アナログであるアルキルグリセロールリン酸がPPARγの高親和性アゴニストであることが発見され7),リゾリン脂質がPPARγのリガンドとして生体内で重要な役割をはたしていることがしだいに明らかになってきた.
 これらの網羅的な研究を進めていくうち,構造が類似していてもPPARγの活性化には関与しないリゾリン脂質の存在することも明らかになってきた.そのひとつがサイクリックホスファチジン酸である(図1).サイクリックホスファチジン酸はリゾホスファチジン酸の環状アナログ体であり,リゾホスファチジン酸とは逆の生理活性を示すという報告がされていた8).そこで,サイクリックホスファチジン酸の生理活性をくわしく解析することにした.手はじめに,PPARγのレポーター遺伝子アッセイを行ったところ,ロシグリタゾンによるPPARγの活性化がサイクリックホスファチジン酸依存的に阻害されることが観察された.さらに,ロシグリタゾンおよびアルキルグリセロールリン酸の放射性標識体を利用してPPARγのリガンド結合ドメインを用いたリガンド結合実験を行ったところ,サイクリックホスファチジン酸はロシグリタゾンおよびアルキルグリセロールリン酸を効果的に追い出すことが明らかになり,また,転写共役制御因子のひとつであるSMRTがサイクリックホスファチジン酸の濃度依存的に安定化され,ロシグリタゾンによる解離を拮抗阻害することも証明された.以上のことから,サイクリックホスファチジン酸はPPARγに対してアンタゴニスト活性をもつものと結論づけた.

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