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1.ESCRT-IIIとCdvAとの相互作用および複合体の立体構造
1.ESCRT-IIIとCdvAとの相互作用および複合体の立体構造
 Sulfolobus目の古細菌のゲノム配列の解析から,ESCRT-IIIおよびVps4の相同体が存在し,さらに,CdvAとともにこれらの遺伝子はオペロンを形成していることが明らかになった(図1).CdvAは機能未知のタンパク質であり,その1次配列情報から,N末端に70残基ほどからなるPRCバレルドメイン(1~70残基),つづいて,複数のαヘリックスからなるヘリカルドメイン(71~208残基),および,1次配列が高度に保存されたC末端領域(209~238残基)からなることが予想された.筆者らのグループでは,これまでに,Vps4とESCRT-IIIとの相互作用の様式について詳細な解析を行い,Vps4のMITドメインとESCRT-IIIのMIM2モチーフとの複合体の立体構造を示している(図1).そこでつぎに,1つのオペロンを形成するこれら3つの遺伝子が協同ではたらいているのではないかと考え,それぞれが相互作用するかどうかを調べた.その結果,GSTプルダウン解析や酵母ツーハイブリッド解析からCdvAがESCRT-IIIと結合するという結果を得たが,CdvAとVps4との相互作用はみられなかった.ESCRT-IIIは細胞膜結合能をもつコアドメインと,Vps4に結合するMIM2モチーフ,および,C末端にウイングドヘリックス様ドメインをもつ.そののち,種々の変異体を用いた蛍光結合解析の結果,ESCRT-IIIのC末端のウイングドヘリックス様ドメインとCdvAのC末端領域(220~238残基,以下,E3Bペプチド)とが相互作用に必要十分であることがわかった(解離定数Kdは6μM).また,S. acidocaldariusには合計4つのESCRT-III相同体が存在するが,そのうちの1つだけがウイングドヘリックス様ドメインをもちCdvAに結合することがわかった.

 さらに詳細に結合様式について調べるため,ESCRT-IIIのウイングドヘリックス様ドメインとCdvAのE3Bペプチドとの結晶化を行ったところ,2.15Åの反射を示す良好な結晶を得て複合体の立体構造を決定することに成功した(PDB ID:2XVC).その結果,CdvAのE3Bペプチドがβストランド構造をとり,ESCRT-IIIのウイングドヘリックス様ドメインの2本のβストランド構造のあいだにはまり込むことで分子間βシート構造を形成するという非常にユニークな立体構造であることが明らかになった(図1).典型的なウイングドヘリックスドメインは3本の逆並行βストランド構造からなるβシート構造をもち,最後の2本の逆並行βストランド構造がいわゆる“wing(羽)”を形成する.一方,ESCRT-III-CdvA複合体は3本のβストランド構造のうちESCRT-IIIが外側の2本を形成し,その2本の内側にCdvAのβストランド構造がはまり込むかたちとなっていた.これはいわば,ESCRT-IIIがもつ“壊れかけた羽”をCdvAが修復しているような,とても珍しいウイングドヘリックスドメインということができた.CdvAのE3BペプチドはSulfolobus目のほかの古細菌でも高度に保存されている.また,Val232,Lys233,Val234の3つのアミノ酸残基がESCRT-IIIとの結合に強く関与していることが立体構造から示唆され,それらは蛍光結合実験により相互作用に重要であることが示された.
 真核生物においてESCRT-II複合体はウイングドヘリックスドメインが8つ結合したかたちをしており,さらに,ESCRT-IIIを細胞膜へとリクルートする役割を担っている.古細菌ではESCRT-IIの相同体はみつかっていないが,古細菌のESCRT-IIIがウイングドヘリックス様ドメインをもつということは,あたかもESCRT-IIとESCRT-IIIとが合体したようなタンパク質であるといえる.進化の過程を考えると,2億年の時の流れのなかで,ESCRT-II複合体がESCRT-III複合体から独立して新たな役割を担うようになったのかもしれない.

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